今回は、読書療法にご関心のある方にとって、参考になる取り組みをご紹介します。

先日、イギリスのBILDが主催するウェビナーを受講する機会がありました。
https://www.bild.org.uk/

Beyond Wordsという、学習障害がある方を支援する団体が主催する読書会についてのウェビナーです。
https://www.booksbeyondwords.co.uk/
Book Club in a Box — Beyond Words

主催者の方の許可をいただきましたので、以下に内容を共有させていただきますね。

この読書会では、文字のない絵本を使用します。
描かれている内容について、1ページずつ、どのようなシーンなのかを参加者が自分なりに考えてコメントしていきます。
正解があるわけではないので、間違えるのではないかという不安感をもたずに参加できるようになっています。

セミナーでは、実際にどのように読書会が行われているのかをデモンストレーションで見せてくださいました。
使用されたのは”George Gets Smart”という本です。
https://www.amazon.co.jp/George-Smart-English-Sheila-Hollins-ebook/dp/B07NNRF4D1/

本書は、身だしなみを整えることの大切さを描いた絵本で、主人公が周囲との関係を改善していく様子が描かれています。
まずは、男性がベッドの中に寝ているところから始まります。
起きて仕事に出かけるのですが、その後の男性の様子はというと、服が汚れて汗染みもあり、周囲から嫌悪感を持たれているようです。
バーに出かけても、周りの人が嫌そうにして彼から距離を置いています。
悲しげに1人で飲んでいた男性は帰宅し、シャワーをしようと思うものの寝てしまい、次の日もまた同じ服を着て出かけようとします。
けれども、母親らしき女性から注意され、シャワーを浴びて身づくろいをし、さっぱりしてから出かけます。
すると周囲の人たちも話しかけてくれる、という流れになっています。

この本について、あるページを見て、
「これはバスに乗ったところかな。この男性は服に汗染みがあって、ずいぶん汚れているみたいだ。
周りの乗客の中には鼻をつまんでいる人もいるし、みんな彼のことを見ている。どうやらちょっと臭うみたいだ」
という具合に、そのページから読み取れることを参加者が話していくのです。

印象的だったのは、シャワーを浴びるページが「脇を洗う」「お尻を洗う」「足指を洗う」と、何ページも続いていることです。
シャワーを浴びるといっても具体的にどうすればいいのかわからない人のために、このような構成になっているようでした。

本書は身だしなみや清潔を保つことについての本でしたが、他にも日常生活上の問題に取り組める内容のものが多く、感情や健康を扱っているそうです。
生活上の現実的な問題を扱うことで障壁を取り除き、インクルージョンを促進することが狙いです。

読書会を開催したい人には、無料で(!)スターターキットが送られてくるそうです。
その中には30冊の文字のない絵本のほか、ファシリテーターガイド、開催告知用のポスター、参加者の感情を記録できるチャート、会員証などが入っています。
読書会を開催したことがない人でも、主催できるようにセットされていて、団体からのサポートも受けられるそうです。

開催場所はデイセンター(日本でのデイサービス)やカフェ、図書館など。
時間は45分から60分で、その後にお茶などの社交の時間がとられていることが多いそうです。
開催頻度は毎週、隔週、毎月などと主催者によって様々です。
オンラインで開催することも可能で、この30冊の書籍にはオンライン版もあり、読書会主催者にはオンライン版も利用できるようになっているそうです。

主に成人を対象としたものですが、学校などで読書会が開催されていることもあり、子供やYA世代にも関係する内容になっています。
参加者には手話で参加する方もいて、耳の不自由な方たちの読書会もあり、手話通訳者がそこには参加するそうです。

一旦全部読んでから1ページごとに読み進めていくのか、それとも1ページずつ順番に一緒に見ていくのかなどについてはルールはなく、主催者の好きなやり方で進めることができます。
本は公共図書館に置かれていて、主催者には図書館員が多くいます。

私が受講した際のウェビナーには、読書会に参加されている方は11%と少なかったようです。
読書会から連想される言葉を選ぶアンケートでは、「友情」「分かち合い」「楽しさ」「笑い」などが挙がっていました。
印象的だったのは、南アフリカで読書会を主催されている方が「誇り」「独立」を選んだことです。

日本読書療法学会でも読書会を主催してきていますが、こういうキットのようなものがあると、確かに広めやすいなと感じました。
この読書会の主催希望者にスターターキットを無料で届けられるのは、国の助成金を受けているからということでした。
もし助成事業に詳しい方がいらっしゃいましたら、情報をお寄せいただけますと幸いです。

以上、ご参考になればうれしく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

寺田真理子